コーヒーの香味は、豆の品種や精選方法、風土や環境、育成方法など様々な条件で違いが出てきます。
細かく知るほど奥が深く、楽しみも増えてきますが、まずは大まかに3大陸(中南米 東南アジア アフリカ)での味の特徴を知って、飲み比べてみましょう。それぞれにある程度特徴を持った違いがあり、3つという単純な分け方が入門編としてオススメです。
南米・中米のコーヒー豆の特徴(コーヒーらしいコーヒー)
主な国々・・・ブラジル、コロンビア、グァテマラ、ペルー、コスタリカ、パナマ、ジャマイカなど
有名なブランド・・・ブルーマウンテン(ジャマイカ)、エメラルドマウンテン(コロンビア)など
この地域のコーヒー豆の味は特徴を説明するのが難しいのですが、皆さんに親しみのあるコーヒーらしいコーヒーで、あまり特徴がないのが特徴です。
コーヒー豆の生産国といえばブラジルやコロンビアが真っ先に浮かぶのではないでしょうか。特にブラジルの生産量は世界の3分の1以上を占め、日本でも昔から喫茶店で出され、インスタントコーヒーなどでも多く使われてきました。普段飲んでいる慣れた味ほど、その人にとっての当たり前の味となり、クセや特徴を感じないものとなります(日本人にとってコーヒーといえばブラジルやコロンビアの味ですが、エチオピアの人々にとってのコーヒーの味といえばエチオピア産の豆となります)。
つまり日本で暮らしてきた人にはこの中南米系の香りや味が標準となるため、バランス良く、苦味・酸味・甘みなどに特段クセがないと思ったときはこの地域のコーヒーになります。
「特徴がないことが特徴」とはいえ、その中での個別の地区や農園別に各々の香味を感じることができます。特にトップレベルのコーヒー豆は各々に際立った独特の香味を兼ね備えることが多いため、中南米の「いつもの味」に、個別の「加わった一味」もあわせて楽しめます。
東南アジアのコーヒー豆の特徴(鋭いパンチ 力)
主な国々・・・インドネシア、インド、ベトナム、パプアニューギニア、タイ、ミャンマーなど
有名なブランド・・・マンデリン・トラジャ・コピ・ルアック(インドネシア)
苦味や酸味が鋭く、パンチの効いたコーヒーというイメージです。どっしりとコク(香味の重なり)があり、アーシー(earthy、大地のような)、スパイシーという表現も使われます。
東南アジアの中ではインドネシアのコーヒー豆の生産量が突出しており、カフェやレギュラーコーヒーなどで皆さんの触れる機会が多いと思います。インドネシアは美しい島々が集まった国で、スマトラ島やスラウェシ島、バリ島などが有名な産地です。雨が降りやすいことから、この地域独特の乾燥時間を短縮させる方式(コーヒーチェリーは、収穫後に乾燥する過程があります)がとられ、そのことが風味の形成にも大きく影響しています。その詳細は別途機会に紹介しますが、これも環境の違いによって生まれる味の一つといえます。
高級種として流通する「アラビカ種」(⇔缶コーヒーやインスタントで使われる「ロブスタ種」)ではあまり見かけないインドやパプアニューギニア、ミャンマーなども飲み慣れた中南米系のコーヒーと比べ、一風変わった特徴を感じることができます。
アフリカ系のコーヒー豆の特徴(フルーティー)
主な国々・・・エチオピア、ケニア、タンザニア、イエメン、ルワンダなど
有名なブランド・・・モカ(エチオピア・イエメン)、キリマンジャロ(タンザニア)
フルーティでほんのり甘い香り、そして良質な酸味を持つコーヒー豆がアフリカ系の主な特徴です。また苦味の少ない豆が多く、飲みやすいコーヒーとなります。
「フルーティ」という表現ではありますが、あくまでコーヒーですのでジュースのように甘くフルーツの味がするわけではありません。コーヒーの味を頭の中で分解していくとフルーツのような風味が感じられるといった程度ですが、なれてくると、飲む度にフルーティだと思えるようになります。コーヒーチェリーを精選したものなので、土台としてはコーヒーチェリーの果実感、そこから派生してオレンジやラズベリー、ブドウの皮、といった香りや味を感じることもあります。
また「良質な酸味」についても、コーヒーチェリーのもつ酸味からくるもので、フルーティの一部となります。果実系の酸味はコーヒーを明るく爽やかにします。
しかし酸味については「コーヒーの酸味」と一言で表現されてしまうため、焙煎してから長時間経ったり、高温の保存によって酸化してしまった悪い味も、本来の良質なものと混同されて、コーヒーの酸味と思われがちです。店舗に酸味が苦手とおっしゃるお客様もいらしゃいますが、果実系の良質な酸味のコーヒーの試飲お出しすると、これなら美味しく飲めるとそのままお買い上げいただくことが多々あります。
ぜひこのアフリカ系のフルーティさと良質な酸味の魅力を意識して、楽しんでいただければと思います。